無謀にも池田信夫先生に議論を挑んでみる

 同じgooブログを使っておられるのと、 はてなブックマーカーのホットエントリーにしょっちゅう登場するので、よく読ませていただいている「池田信夫blog」 アクセス数で当ブログの10倍以上を常にキープしておられて、 僕なんかが背伸びしたってとてもかなわない人気ブログでいらっしゃる。

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 さらに池田先生は上武大学大学院の客員教授だそうで、専門分野の話については僕なんかがとうてい太刀打ちできる相手じゃない・・・ かもしれないけど、読んでいて「やっぱりおかしいな」と思ったので、無謀にも議論を挑んでみようと思い、 コメント欄に書き込みをしたわけですよ。
 そうすると、池田先生は1回目のコメントは表示してくれたのに2回目のコメントは表示していただけない。ということで、 自分のブログにエントリーを書いてトラックバックを送ることにした、という次第。
 (もしかして、こちらのミスで届いていないだけでしたらホントにゴメンなさい!)
 (追記:トラックバックも承認制みたいで、何度送っても反映してもらえません・・・orz)

 ということで、挑戦したのは10月23日のエントリー 「戦略なき思考」
 まずは前半部分を引用

 貸金業規正法の改正案がさらに手直しされ、 特例措置の高金利を廃止して、 消費者信用団体生命保険を借り手にかけることも禁じる方針が与党で決まった。前者については、 当ブログでも何度か書いたので、ここでは後者について考えてみよう。
 この保険は、債務者の生命保険でサラ金を返済させるもので、「人の命を担保にとるのは非人道的だ」という批判を浴びて、 業界では自粛していた。今回の規制では、これを法律でも禁止するようだ。これは一見、 債務者を自殺に追い込んで借金を取り立てるサラ金の悪逆非道な行為を防止する人道的な規制のようにみえる。
 しかし問題はまず、そういうことが起こっているのかどうかということだ。
金融庁の調査によれば、この保険の総受取件数のうち、自殺を原因とする受取件数は9.4%。 これは死亡原因(20?69歳)のうち自殺の占める率9.04%とほぼ同じである。つまり、 この保険に入ることによって自殺が増えるという因果関係は見られない。

 まず、前半部分の下線部の数字がかなり恣意的な数字の選び方をしている。
 僕が反論として書いたのは「これは、 死因の判明が4割にしか過ぎないという事情のためであり判明している4割の中で自殺者の割合をみると2割を超えます」 (当該赤旗記事
 そうすっと、ご本人から「自殺の比率は、サラ金の債務者の年齢である20?49歳では25.09%にものぼるので、これも特に高いとはいえない」
 との反論コメントが返ってきた。
 前者の数字が実はもっと高い数字だったということが指摘されたので、今度は後者の数字を年齢幅を若い年齢層にシフトさせることで、 数字を高くしてきたわけです。
 エントリーに書いて無い数字を新たに出してきた時点で、最初の数字が不正確ってことを認めているも同然だが、 これは反論としてはズレているとしかいいようが無いと感じた。だって、僕は「自殺を原因とする受取件数は9.4%。これは死亡原因(20?69歳)のうち自殺の占める率9.04%とほぼ同じである」 ←この数字にウソがあるということを指摘しているのだから、違う数字を出すときには「たしかに不正確でした」 と認めるのが誠実な態度だと思うのですが、、、(すいません!生意気言って!)。

 そんなこともあって、今度は池田先生のエントリーの後半部分につっこみを入れるコメントを書いて見た。当該部分を引用してみる。

 このように「命を担保に取るのは許せない→保険をやめさせる」 といった1段階の論理による規制が、日本の法律には多い。たとえば

1.店子が追い出されるのはかわいそうだ→店子を追い出せないようにする(借地借家法
2.労働者が解雇されるのはかわいそうだ→解雇制限を厳重にする(労働基準法

 という規制は、一見、弱者を守っているように見える。しかし2段階目を考えてみると、この規制に家主や経営者が合理的に対応すれば、

1.→家を貸すのをやめる→借家の供給が減る→家賃が上がる
2.→正社員を減らし契約社員派遣社員にする→非正規雇用が増える

 という結果になり、結局は弱者が困るのである。自分の行動に対して、 相手がどう対応するかを予想して行動することを戦略的行動とよぶ。 ゲーム理論は戦略的行動の理論だが、法律家にはこういう2段階の推論さえできない人が多い。この原因は、法律ではすべての段階で「正義」 が「合理性」よりも優先されるためだと思われる。近視眼的な正義が、結果的には大きな社会的不正義を生んでいることに気づくべきだ。

 ゲーム理論については囚人のジレンマぐらいしか知らない僕だが、 この2段階目の合理的な対応を考える例として「借地借家法」と「労働基準法」を例に挙げているのだが、これまた「それはちがうだろう!」 と感じて、こんな反論をコメント欄に書き込んで見た。

 同じ論法で、
1、家を追い出された店子が借り手として市場にあふれ出す⇒借家の需要が増える⇒家賃が上る
2、いつでも首をきれるので安心して正社員の賃金を下げる⇒賃金を下げられても労働者は文句を言えない⇒正社員が派遣・ パート並の賃金になる

 ということもできますよね?

 家賃を下げるためには、家賃の低い公的な住宅を供給すれば、需要と供給の関係で「貸し手の合理的な判断」 によって家賃相場を下げることはできます。
 また解雇規制を正社員だけではなく派遣やパートにまで拡大し、さらにパートや派遣の最低賃金を上げる規制をすれば 「派遣やパートより正社員のほうが安上がり」と、企業が合理的に判断して行動するんじゃないでしょうか?

 とまぁ、こんな趣旨のコメントを追加で書き込んだんだけど(コピッて無いから、記憶をもとに再現)、 残念ながら池田先生は僕のコメントを表示してくれなかった、ので、反論もお聞きできなかった。(揚げ足とりみたいに思われたのかなぁ?、、、_| ̄|○

 池田先生は法律家の「1段階の論理」を批判しておられるが、こと借地借家法と解雇規制の話しについては、 むしろ池田先生は2段階目から先の3段階・4段階先まで見渡せているのだろうかと感じる。

 確かに定期借家権を設定できる法律が通過した当初(1992年)は、 定期借家契約の家賃はそうじゃない物件に比べてそこそこ下った。けどそれも4?5年の話で、結局公的な住宅が供給されなくなったことや、 古い借家がどんどん潰されていく中で、家賃相場そのものは元の木阿弥になり、借り手の権利の後退だけが後に残ってしまっているのが現状だ。
 解雇規制にしても、判例に過ぎないから、裁判にまで至らない解雇事例が圧倒的に多い中で、労働市場に失業者があふれ出し、 正社員の賃金相場が下ることと派遣パートなど不安定雇用の比率が上ることは同時並行で進行しているのが現在起きている事態だ。

 自分の行動に対して、相手がどう対応するかを予想して行動することがゲーム理論なら、 法律をつくる作業は、相手の対応に対してさらに社会全体がどのような対応をおこなうかまで先を見越して、 必要なら他の手立ても同時に実行することで、全体として「正義」と「合理性」を実現する過程だ。
 そして、誰にとっての「正義」や「合理性」を実現するための法律として仕上がるかどうかを決めるのは、与党と野党、そして世論の力関係だ。

 サラ金の問題で言えば、やはりサラ金業界が空前の大儲けを上げていて、その儲けをCMなど通じて借りる必要の無い(返済する資力も無い) 新たな債務者を創り出している現状をまずは何とかしなくちゃイケないわけで、そのためのグレーゾーン金利の廃止だし、CM規制だし、 団体信用生命保険の規制なわけです。
 2段階の論理でいえは、2段階目でおきるのはサラ金業界が全体として利益が減ることでCMなどを出せなくなれば、 現在のように借りる必要の無い人まで貸し出している現状を改善できるんじゃないでしょうか?
 また「遺族の負担になる」という問題への対応は、金利負担を引き下げることでそもそもの発生数が減らせますし、 相続放棄などの手段でほぼ排除することが可能でしょう。たしか僕の理解が正しければ、 病死などは引き続き団体信用生命保険で対応する方針だったと思うので、これも問題はないかと。(違ったらゴメンなさいm(__)m)
 確かに池田先生の指摘するように自殺と保険の因果関係はもしかしたら無いのかもしれません。しかし、自殺による保険支払いへの規制は、 債務者を自殺させない努力をサラ金業界として行うような方向へ誘導させることが全体として出来るのでは無いでしょうか?

 ついでに言えば「与信能力の無い貧困層が金を借りれなくなるじゃないか!」という問題には、 そもそもサラ金からもお金を借りられないような「貧困」の問題を解決することが先決であって、 それこそ法律を作る人間=政治家の仕事だというのが私の立場です。

 僕的には法律家を「近視眼的な正義」と批判している池田先生のほうが実は近視眼的なのではないかと感じたのですがどうでしょう?・・・ って
 生意気な反論を書いてしまって本当に申し訳ありません!m(__)m

 池田先生のブログはIT業界の最新動向とかすごく勉強になりますし、 ゲーム理論も物事を見る新しい切り口の一つとしてすごく参考になりますので、これからも楽しく読ませていただきます。 重ね重ね生意気言ってすいませんです、ハイ。

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