「シンドラーのリスト」を読み解く


 「シンドラーのリスト」を読み解く・・・と言っても映画の「シンドラーのリスト」ではなく、今話題の「シンドラーエレベータ」 のことですよ。

 まずはこの記事
 シンドラー社、 都に設置リスト提出拒否

 「ほんとに外資系企業なの?」ってうたがいたくなるような、リスクマネジメント能力の欠如。多くの人々の命を救った” シンドラーのリスト”という言葉に見事なまでに泥を塗ってしまいました。

 それからこの記事
 シンドラーエレベータ公共施設に集中なぜ

 世界では「世界シェアー、エレベーターで第2位、ムービングウォークで第1位」を誇るシンドラー社だが、 日本ではシェアー1%に満たない。しかし、例えば都営住宅にかぎって見るとそのシェアーは12%と跳ね上がる。
 何故か?
 この会社がとにかく「安い」ことを売りにしている会社で、 入札価格で業者を決める公共団体のエレベーターなら参入しやすかったという事情が背景にあるようだ。

 続いてこの記事
 管理会社の変更時、 異常多発伝えず…エレベーター死亡

 この事故の場合、14ヵ月前に管理会社をシンドラー社からは「日本電力サービス」に、そして今年4月からは「エス・イー・ シーエレベーター」に、切り替えている。
 勿論、メーカーとメンテナンスの会社が同じでなければいけないって言うつもりはない。むしろ『製造した会社が検査もする』って言うのは、 自分でテスト問題をつくって自分で解くようなものだから、 全くの第3者がメンテナンスをする方が厳しく検査をしてくれて健全だという考え方もある。
 しかしながら、不具合情報が引き継がれないようでは、せっかくの第3者によるチェックも「無意味」それどころか「害悪」 とさえ言えると思う。
 そしてさらにつけ加えると、エレベーター業界ってのは「車」や「家電」なんかと比べると、技術の『仕様』が共通化されていなかったりして、 メンテナンスをしようにも、設置メーカー以外の第3者が「この部分のベアリングは何万回転で部品交換が必要」「ブレーキの『遊び』 は何ミリから何ミリの範囲に収める」といった企業秘密に属する情報が利用できないので、安全に関わる点検を『メーカーによる自主点検』 に依存してきた経過があるわけなんだな。
 でもって、日本のメーカーは、日本が地震大国であるといった事情もあって「安全性」を重視した『技術競争』が『価格競争』 よりもメインとなっていた。ほら、地震がおきるたんびに「エレベーターで閉じこめ事故・○○エレベーター社製の・・・」 って記事が紙面を飾るじゃないですか。日本のエレベーター大手5社は、そんな競争に鍛えられて 「精密さ」「安定性」を誇ってきたから(と思う)、今まであんまり問題にならなかったわけだ。
 しかし、この方式だとやっぱり競争が働かないからメンテナンス費用も割高だった側面も否めない、その隙間をねらって 「入札制度を活用して少しでも税金を節約しよう」という、公共施設などを中心に、 メンテナンス専業会社なんてのが参入して急成長してきたってわけだ。その代表格がこの「エス・イー・シーエレベーター」ってわけ。

 さらに続いてこの記事。
 保守費42% 削減?東京・港区 管理会社を毎年変更

 さすがは「しんぶん赤旗」です!背景に「コスト削減」「自治体リストラ」 がある可能性をバッチリ指摘しています。
 やっぱり、エレベーターのような高い安全性が求められる設備にも「とにかく安く」を求めた自治体にもかなり責任があるんじゃないかなぁ?  って僕も思います。


 最後にこの記事
 エレベーター事故: ブレーキに異常か 電源切で急上昇

 これは実は大問題で、エレベーターっていうのは電源が切れると電磁ブレーキが作動して(というより、 電気が流れた状態でないとブレーキがゆるんでくれないと言った方が良いかな?)必ず「止まる」 仕組みになっている?それが一番安全だからだ?にもかかわらず、今回の事故では、電源が切られた状態で急上昇している。
 「保守点検がちゃんとなされていなかったからか?」
 その可能性はたしかにある。しかし、電磁ブレーキという「最後の切り札」が簡単に壊れるようでは困ってしまうという見方もできる。つまり、 滅多に不具合が起こらない部品として精密に仕上げるのが当たり前である。 シンドラー社が指摘するようにたった14ヵ月点検をされなかっただけで、 死亡事故につながるようなブレーキというメチャクチャ大事な部品に不具合が生じるようでは、車であればリコール物だ、、、

 そこで、今日は最後にコバコバがまたまたマスコミが書かないとっておきの裏情報を暴露しちゃいます、、、それは

 エレベーターの部品には「リコール」という制度がない。

 建築物の安全性に最終責任を負う「国土交通省」は、 日本のエレベーターメーカーの高い技術力を信頼しきって、安全を担保するための「外部によるチェック」「違反した場合のペナルティー」 の制度を未整備だったんだと思う。その分かりやすい事例一つがこれ。
 たしかに国土交通省にとっては「盲点」だったかもしれない、しかし、人が一人死んでいるわけだからやっぱり反省はすべきだろう。

 マスコミも一部のタチの悪いメーカーだけに責任をなすりつけるためのアラ探しに奔走するよりも、 こういうタチの悪いメーカーが入り込んでこられた背景に鋭くメスを入れるような報道を心がけて欲しいものです。

 やっぱり「安全」は「安かろう悪かろう」じゃ守れないってことよネン♪ってことで、今日も応援お願い! →

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