【読書感想文】 アレックス・カー「観光亡国論」

 

観光亡国論 (中公新書ラクレ)

観光亡国論 (中公新書ラクレ)

 

  選挙中に私が演説で話した、観光公害に関する内容について「アレックス・カーの『観光亡国論』に、全く同じ内容の話が載ってましたよ」との指摘を受けたので、即購入。

 とは言え、選挙期間中には読んでる時間はありませんでしたから、結局、選挙が終わってから一気に読みました。読み終わった感想としては「これこれ!言いたかったこと全部書いてある。選挙期間中に読んどきゃよかった!」といったところでしょうか。とにかく、京都で起きている「観光公害」の現状分析が、私が選挙期間中に語っていた内容とまったくそのまま重なってました。

 たぶん、この本を読んでいた人が私の演説を聞いたら「あの人、アレックス・カーの本の内容、そのまんま演説してる」って思われていたんじゃないかと心配になるレベルです。

 もちろん、書いてある内容、全部に賛成できるわけではありません、特に「御土居」の内側への宿泊施設建設は認めず、その外側(ただし、東山区は除く)に誘導する。京都駅の南側には高層建築を認めても良いんじゃないかというのは、ちょっといただけません。私が本質的な解決にはならないと指摘してきた「分散化」そのものです。

 著者自身が認めているように、政府の審議会で委員をつとめるなど「観光立国の推進役」としての顔も持っている立場からくる限界もあるでしょう。しかし、そういう立場の人から、こういう「観光公害」の深刻な実態についての現状分析が出てくることが大事です。

 とくに、京都の問題の解決策として「総量規制」が必要だとはっきり認めているのは良い!あと、繰り返し「適切な、管理(マネジメント)と制限(コントロール)」が必要としており、私は「これは行政・政治の仕事だ」と受け止めました。

 海外の事例紹介も非常に参考になりました。日本の観光行政がなんと遅れていることかと、ため息が出てくるレベルで、世界はこの問題に先回りして対策を講じています。もちろん、そのまま真似してもうまくいかないのはハッキリしています。こういう内容をもっと多くの京都市民が知ることが、成功させるカギです。

 ということで、おすすめの一冊です。