観光客の「分散」では「観光公害対策」にはならない

f:id:kobakoba3:20190226205726j:plain

八坂の塔

 写真は本日午前10時頃の、八坂の塔に続く石畳、通称「夢見坂」と呼ばれる、観光スポットです。奇跡的に人が少ないタイミングで写真を取れましたが、普段は自転車で侵入する気にはなれないぐらい観光客でごった返してます。

 さて、昨日の京都市会代表質問で、平井議員の「観光公害問題」に対する答弁で、「時期・時間帯・場所の偏りにより、一部地域で市民生活に悪影響を与える混雑が生じている」「隠れた観光スポットのアピール、混雑していない時期・時間帯の案内」など、「観光客を分散化させる」ことで対策をするというものでした。

 私は、これは観光公害対策として、一番やっちゃいけないことだと思ってます。

 私の住む月輪学区には、東福寺という紅葉が有名な観光スポットがあります。紅葉のシーズになると、2~3週間、観光客でごった返して、車は進入禁止、自転車も降りて手で押さなくちゃいけない状況になります。

 でも、そういう迷惑を被る期間はほんの2~3週間、終われば日常生活に戻れますし、迷惑料代わりの無料参拝チケットが地域住民に配布されたりもしますし、なんといっても東福寺の紅葉は素晴らしいので、全国から見に来てもらえることを誇りに思えます。

 昨年の紅葉の時期に、宣伝の移動で東福寺の駅前を通過した時の事です「あ!小林さーん!」と、屋台のお兄さんから声をかけられました。近所のお好み焼き屋のお兄さんでした。

「あれ!どうしたんこんなとこで!?」
「この時期だけ、ここでバイトしてんねん」
「そうなんや~(笑)ここって普段は◯屋さんやんなあ?」
「そやねん。僕、ここの親戚やねん。この時期だけこうやって店出すねん。ほら、この甘栗持って行き~(笑)」
「えー!エエのん?おおきに~!」

 普段は、地元住民向けに商売をしてい小売店の前に、こんな感じで、天津甘栗とか観光客向けの屋台が出店しています。こうやって、地域住民にとって無くてはならない住民向けの商品を扱う商店が、たくましく小遣い稼ぎをする期間になっているわけです。

 もしこれが分散化して、年がら年中、観光客が見込めるようになったら、地元住民向けに商売をした小売店を、東京資本の観光ビジネスの会社が買い取って観光客向けのお店に業態転換させてしまうのは目に見えています。お好み焼き屋のお兄さんも短期のおいしいアルバイトを失ってしまうことでしょう。

 私は、観光地には『観光シーズン』と『オフシーズン』とがある方が、外からの観光ビジネス資本が入り込まず、地元住民には生活にメリハリ(と、ほんの少しだけのボーナス)を与え、さらには地域への愛着と誇りをもたらしてくれるものだと思います。

 あと、いつ行っても、人でごった返している観光スポットでも、リピーター観光客しか知らない「混雑しない時間帯」があることの価値ってものすごくあると思います。行政が、そういう情報を公開しちゃったりしたら、リピーター客が「今の京都は行く気にならない」と思わせてしまうことになるだけじゃぁないでしょうか?
 本来の観光シーズンではない=本来の素晴らしさを観られない時期に観光に来て、混雑「しか」経験しなかった観光客が、リピーターになるはずがありません。混雑する時期には混雑するなりの「素晴らしいものが観られる」という価値があるからこそ、受け入れることができるのです。

 「観光客の流入を分散化させる」などという、観光客を地域にお金を落とす「金づる」としてしか見ない近視眼的な観光政策は、観光客の満足度を低下させ、観光地としての持続可能性をも破壊します。

 今必要なのは、分散化ではなく総量の規制。住民の住みやすさを優先した観光政策です。