これでいいのか?―京都市屋外広告物条例

 今月9月1日から、京都市屋外広告物条例(2007年大幅改正)が「完全施行」となりました。

広告規制条例に業者悲鳴 京都、きょうから完全施行 - 47NEWS(よんななニュース)

 私のところにも「京都市から指導文書が届いた」という相談が多数寄せられています。東山区はとくにキビシイ地域で、個人商店の皆さんも景観への関心は高く、景観を守るという条例の目的に真正面から反対という声はないものの、やっぱり不満は大きい。

 私はこれ、京都市のやり方に問題があると思っています。
 以下、長文です。

 そもそも、この屋外広告物条例、京都市では1956年(昭和31年)に制定されています。
 もともと「京都市屋外広告物条例」では、2㎡以上の看板等を「屋外広告物」と定義、屋外広告物の設置に「届け出」を義務付けて、条例の基準に適合するか「審査」をして「許可」を出すしくみになっていました。

 ところが、多くの個人商店は「届け出」が義務だなんて知らないケースが圧倒的に多いんです。
 最初に審査することとなる「建築確認申請」が1956年以前の建物というケースも多いですし、条例を知らない京都府外の広告業者に頼んで看板を後付けしているケースもあります。「条例に適合するかどうか審査」するには手間もお金(手数料)もかかりますし、誰がすき好んで審査を受けるのかという問題もありました。

 また、行政側から見ても、手数料収入ではとてもまかなえない手間とお金がかかる(←だから何だ!という話ではあるが)。最初から『条例に適合している』看板の場合、届け出義務に違反していることだけでは罰することも出来ない。ということで、京都市も届け出を積極的には呼びかけず、届け出義務違反についてはお目こぼししてきたというのが実態だったんです。

 じゃあ、この条例に意味がなかったかというとそうではなく、高度成長時代やバブルの時代、ビル・マンションの建築ラッシュで、京都の町こわしが問題になった時、建築確認申請の段階や、後付けで看板を付けた時などに「京都の街壊し許すな!」という運動にとっての「武器」でもあったわけです。

 そんな背景から「景観を守れ」の運動の成果の一つとして、2007年に屋外広告物を規制する基準を一気に厳しくする改正屋外広告物条例が成立します。
 この時に「屋外広告物条例にもとづく届け出をしていた看板」で、「条例改正により、条例に不適合となった看板」については、「7年間の猶予期間をあげますよ」という内容に落ち着きました。

 ところが、市内の多くの屋外広告物は「届け出済みの看板」の数よりも、「無届けの看板」の方が圧倒的に多いわけです。
 京都市も「無届けの看板は把握してません」という状態だったのを、条例の完全施行日が近づいてきて、ちゃんと手数料を払って届け出をしていた事業者からの反発を恐れて、急にここ1~2年で、職員の体制を整え(4~5人⇒100人規模、臨時雇用で!)て、2㎡以上の屋外広告物の把握を開始しだしたというのが実態です。

 看板の中には、商売廃業で「無主の状態」になった看板もたくさんありますが、京都市はそういう看板には手を出さず、ギリギリのところで踏んばって商売を続けている個人商店を優先的に、「指導」という名の「お願い」(頼まれるほうは、取締りをうけているとしか感じられない)をしてるわけです。

 個人商店の皆さんにとっては、まさに寝耳に水。不満・反発が広がるのも当然の話しです。そんなやり方じゃぁダメでしょ!? って思います。

 ということで、京都市はこれからこの条例に基づく指導を強めてくるわけですが、これだけ不満が上がっている以上、そのやり方を抜本的に見なおさなければいけません。

 まず
 *審査に『手数料』をとるのではなく、手数料は無料にした上で、審査適合に『ご褒美』を与える。
 *条例違反看板の撤去費用について、撤去費用の補助金制度をつくるor無料で撤去する業者を派遣する公共事業の実施。
 *「無主の看板」を行政が撤去できるようにする。(財産権の関係とかいろいろ難しい問題はあるが・・・)

 などなどの、仕組みづくりとともに、
 *「条例の趣旨を懇切丁寧に説明する」
 *「紙切れ一枚で『指導』するのではなく、現地現場へ足を運んで話し合いを持つ」
 *「担当職員は臨時雇用ではなく、条例の趣旨をちゃんと理解し『京都の景観と住民の生活を守る』ことに情熱を持ったプロの行政マンを配置する」

 といった、市役所の体制を整えることが必要ではないでしょうか?

 少なくとも京都市は、今のような個人商店いじめのようなやり方は改めるべきです。