昨日に引き続き、伝統的工芸品産業について。
僕が、伝統産業に関わっている職人さんなどとお話をするときにいつも言っていることがあります。
それは「今の苦しい時期を乗り越えることが出来れば、伝統産業は21世紀の日本経済を牽引する成長産業に発展できる」ということです。
さすがに『成長産業』とまで持ち上げると、多くの方は苦笑してしまうのですが、結構本気でそのように考えています。
以下、理由を述べます。
20世紀と21世紀、産業構造のあり方として好まれたキーワードを対比させてみましょう。
*20世紀 ⇔ 21世紀
*大量生産 ⇔ 多品種少量生産
*大量消費 ⇔ 長寿命化
*大量廃棄 ⇔ エコロジー
*低価格競争 ⇔ 高付加価値競争
・・・ ・・・
どうでしょう。前者が伝統産業にとって苦手な分野で、後者は伝統産業にとって得意な分野であるということは、ピンと来ないでしょうか?
要するに、資本主義社会のあり方として、資本⇔商品生産、の交換サイクルをいかに早めるかをひたすら追求して行った時代が20世紀なら、そのサイクルを適正な速度に抑えつつ、地球環境に負荷をかけないように、人類と地球環境が共存していく関係を模索するのが21世紀だと私は考えています。
例えば一足5000円もする『誂え足袋』ですが、1足あたり1年もつなら、3足1000円の靴下を毎月1足ずつゴミに出すより、とってもエコロジーでエコノミー♪ です。
清水焼の4万円もするマグカップなら、それこそ一生大事に使うことでしょう。同じ重さの陶器なら、5万円の陶器も100円ショップの陶器も、製造に費やされる環境負荷(=焼く時に出されるCO2等)はほぼ同じです。
また、確かに日本の製造業は、機械化された工場で同じ商品を大量につくる技術については素晴らしかったかも知れません。しかし、モノづくりの基本はどこまでいっても『人間の手作りの技』が基本にあって、その人間の技を機械に代理をさせているだけです。
モノづくりの基本である『手仕事』を潰してしまっては、機械化されたモノづくり作業も、その発展が止まってしまうのです。
伝統産業・職人技というのは、一度潰してしまったら取り戻すのに大変な苦労をします。
今、デフレ不況のもと、100円ショップに代表される『安かろう・悪かろう』の大量生産商品が幅をきかせる=20世紀の遺物のような経済環境によって、伝統的工芸品産業が潰されかけています。
しかし、この『伝統の技』無くしてしまっては将来にとって大きな損失です。
今は本気で政治がテコ入れすべき時期だと、小林たかひろは考えています。