恋人に今すぐ会いに行きたくなる小説です。。。。と言っても、僕にはいないんだけどさ、、、orz


100万分の1の恋人
  • 著:榊邦彦
  • 出版社:新潮社
  • 定価:1365円
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 この小説なにがすごいって、エンタメ小説ではありがちな「ストーリーに一番大事な情報をなるべく後のほうまで隠して、 前半部分に謎解き的な要素や伏線的な要素で盛り上げる」という手法をハナッカラ放棄して、たった5ページ読み進んだだけでストーリーに一番大事な情報が出てきてしまうところ。

 かなり似たようなテーマで書かれた、石田衣良さんの「美丘」なんて、全体で290ページあるのに、一番大事な情報が出てくるのは170ページ目なんだから、その対比がかなり興味深い。

 ・最初から一番大事な情報をオープンにすることで、ストーリーの全体を通じてテーマを掘り下げる。
 ・主役の内面を描き出すために、自分の心を磨きに磨いて「この台詞、この行動以外に、主人公がとるべき行動は無い」 と思わせるリアリティーを描き出す
 それが本来の「小説家」というものなら、榊邦彦さんは新人ながら「小説らしい小説」を書いている作家と言えるかもしれない。

 ただ僕的には、読んでいて面白いのは断然! 石田衣良さんだなw
 
とも思う。
 ちょっと荒唐無稽な部分も含むエンタメ小説として、読者を楽しませることに徹している。
 言葉の巧みさも抜群。

 ってなことで、偶然にも最近読んだばかりの2冊の恋愛小説が、 かなり似たようなテーマをまったく対照的な手法で書いているのが印象的で思わず、比べちゃいましたw
 出版すれば必ずベストセラーの超・売れっ子、石田衣良さんと比べられたら、 新人賞をとったとはいえ誰だって迷惑な話だろうナwww
 しかし、しかしだ、、、

 この2冊を読み比べてからこのエントリーを読んで、僕のことを「ミーハーっだなぁ」「俗物的だなぁ」 と思う御仁ももしかしたらおられると思う、、、そして、その感性はかなり正しい!

 多分、本当の小説好き・本好きは、「美丘」よりも、この「100万分の1の恋人」の方が好感を持つだろうなぁと思うナ。
 あと、石田衣良さんはSEX描写がナマメカシ過ぎるから、そういうのが苦手な人もネ
 って事で、僕の中ではこの小説、かなり評価高いです。

 さて、そろそろ肝心の「内容の紹介」に移りますかねぇ↓

#5ページ目に書いてあるから「ネタバレ」にはならないと思うけど、 それでも純粋に楽しみたい人は以下の文書を先に読むことはお薦めしません。

 主人公の「僕」は、就職活動中の大学院生。
 就職難の中、母校の教職員というなかなか安定した職にありつく。
 「僕」には幼稚園・小学校をともに過ごした幼馴染で、大学に入学してから再開⇒4年間の交際を経て、「僕」 に就職が決まり次第プロポーズをすると決めていた恋人=ミサキがいるのだが、そのミサキがプロポーズの直後に衝撃的な事実を告白する。

 「私のお父さんね、病気なんだ」
 黙っていると、微笑むような嘆息が聞こえた。
 「『ハンチントン病』って言うの」

 ハンチントン病ってのは、 治療法の見つかっていない遺伝性の希少難病 (100万分の1の由来はこの病気の発症率)で、その症状はかなり重く、 介護する家族の負担は計り知れないという重い病気。
 しかも、父親が発病した場合子供の発症率は50%という高率で、 子供には介護の負担と発病するかもしれないという恐怖が付きまとう。
 医学の進歩によって、遺伝子診断で将来発病するかどうかを判定することが出来るようになっているのだが、ミサキは「知らない権利」 を選択する。
 白でも黒でもない「灰色の私を生きる」と決めたのだ。
 ちなみにこの遺伝子診断は、胎児に対しても有効なのだが、、、

 これ以上は書かないけど、勘の良い人ならピンとくると思う、つまり生命倫理にも踏み込んだかなり重たいテーマを取り上げた小説なんだな、これが。

 主人公の「僕」がミサキとどんな関係を築いていくのか、、、それは読んでのお楽しみ。
 ヒントとしては、石田衣良の「美丘」みたいに、読者を無理やり泣かせようとするような過剰な演出は無い、とだけ教えておく。 (石田衣良は電車の中で読むとマジで危険!)
 じんわりと瞳が潤う程度の被害で済むので、安心して通勤電車の中で読んでOKwww
 読後に恋人にすぐにでも会いに行きたくなることうけあいです。
 まあ、僕にはいないんだけどな!、、、 (T_T)
 とりあえず、こんな感じで持ち上げときゃ、 無料で献本してもらった義理は果たしたといえるんじゃないかなぁw
 ⇒ねぇ?「本が好き!プロジェクト」 さんw

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