硫黄島からの手紙

栗林忠道 硫黄島からの手紙

文藝春秋

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 実に2年ぶりで映画館に映画を見に行きました。
 やっぱり映画館の大画面と大音響はイイですネ!

 映画タイトル:硫黄島からの手紙
 初公開年月 :2006/12/09
 監督:クリント・イーストウッド
 脚本:アイリス・ヤマシタ
 出演:渡辺謙  二宮和也  伊原剛志 加瀬亮  中村獅童 他

 ストーリーは、1944年6月、硫黄島に渡辺謙の扮する、栗林中将が上陸するところからはじまる。
 戦況が悪化の一途をたどる中、本土防衛の最後の砦ともいうべき硫黄島。それまでの場当たり的な作戦をあらためて、 部下に対する理不尽な体罰なども厳禁、古参の指揮官が連合艦隊の壊滅という情報に接して「こんな島上陸されたらひとたまりも無い、 せめて潔く玉砕するべきだ」等と無責任な発言をするのに対して、 一日でも長く米軍を足止めするために最も合理的な作戦をするべしと考えた栗林中将は、従来の常識にはとらわれないやり方で、 一部の指揮官からは反発されつつも、頼もしい理解者(西竹一男爵)や、 新しい合理的な指揮方針のもとで信頼をかちとった兵士達の支えもあって、後に米軍からも高く評価されるほどに、 これまでの日本軍と比べればはるかに効果的に米軍への抵抗(まぁ足止めにしか過ぎないんだが)を行うこととなるのだが・・・

 実際の史実でも、米軍の目論見では5日間で完遂させるはずだった硫黄島攻略作戦は、目論見を大きく外れて38日間の長きにおよび、 日本側の戦死者数は20,933名の守備兵力のうち20,129名、アメリカ側は約三倍の兵力、 物資面でも圧倒していたにもかかわらず戦死6,821名、戦傷21,865名の損害と、 兵力で比較すればアメリカ軍地上部隊の損害が日本軍の損害を上回った唯一の戦闘となったのがこの硫黄島のたたかいだったわけなんだな。

 映画では、渡辺謙の扮する、栗林中将が上陸直後に、 上官から体罰を受ける西郷君(二宮って言うジャニ・タレ)を「マアマア、無駄に体力使うな、昼食抜きぐらいで許してやれ」などと、 のっけからカッコよく登場する。

 でもって「アメリカの車の生産台数は知ってますか?年間500万台ですよ。海岸線なんかひとたまりも無い。無意味だ」 などと言い放ち、海岸線に塹壕を掘っている作業を中止させてしまうあたりもこれまたカッコいい。

 そんな栗林のやり方に反発をする古参の指揮官の「狂いっぷり」がこれまた強烈に描写される。
 とくに壮絶なのは擂鉢山(すりばちやま)が陥落したときに、生き残った兵士に対して、栗林は残った物資を回収し、 北部の部隊に合流するように命令を出すのだが、命令を受けた指揮官はそれを無視して自分の部下に対して、玉砕 (=敵を足止めするためにはまったく無意味な手榴弾による自殺)を命ずる。 たまたま栗林の無線を立ち聞きした兵士が自殺をためらった仲間に呼びかけて、北部の部隊に合流するのだけど、合流先にはこれまた 「クレージーな指揮官(=中村獅童)」がいて、「何で自決しないで逃げてきた!今ここで俺が殺す!!」と、制裁 (=敵を足止めするためにはまったく無意味な殺人)を加えようとする。

 で結局、中村獅童の守備する陣地もあっという間に敵に囲まれちゃうんだけど、中村獅童がいわゆる「万歳攻撃」 に打って出ようとするのを、バロン西(=伊原剛志)が止めて、 中村獅童は結局部下をバロン西に預けて一人だけで無謀な突撃に出発しちゃったりする。

 とにかく、全編にわたって米軍の物量が圧倒的に勝っていてその中でよくぞテンションをキープして、ギリギリまで抵抗し続けるための 「志気」を保てるような「指揮」を行った栗林中将をかっこよく描きつつ、戦闘の悲惨さについても強烈に訴えてくれる作品なのだが、、、
 やっぱ、栗林みたいな指揮官は例外的で、無意味な自決や無謀な突撃を強要するような指揮官のほうが多かったんだと思うし、 その栗林中将にしても兵士の95%を死なせるまで戦闘を継続させた指揮官っていう点ではあんまり誉められた話とは思えんかった。

 2万人以上の戦死者を出した戦闘で稼いだ時間がたったの38日ってのは、イラク戦争開始までの「話し合い解決」 のための外交に費やした三年以上の年月と比べてもはるかに犠牲が多くて稼いだ時間は短いと感じる。
 そういう点でやっぱし戦争って無駄で理不尽で悲惨なもんやなぁと感じるのにはイイ映画だと思うが、、、
 
栗林中将的な、あくまでも戦闘を遂行する「作戦としての合理性」や「戦死に『意義』を与えること」を、評価したり、 持ち上げたりすることには違和感を感じずにはいられなかったのでした。

 ってことで、いろいろ考えさせられるっていう点では、いろんな人に見にいってもらって感想を交流したいと思えるイイ映画でした。
 お勧め度は星4つ!(★★★★☆)

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