「マルクスがweb進化論を語る」―web2.0についてマルクスさんに聞いて見た・・・その10

 

その10:「マルクスがweb進化論を語る

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*連載も第10回めです、いよいよ最終回? 今回は最近流行っている「web進化論」 をマルクス流に切ってみようかなと・・・

 

 どもども、マルクスさんご無沙汰です。
 ホントご無沙汰だよな。1週間もほっとくなんて、 非常識にもほどがあるぞゴルァ!
 いや、、、その、、 共産党の専従職員でもゴールデンウィークにはそれなりに休みたいというか、、、

 ハア?それで、長野に旅行に行っていたと?
 もういいよ!ほら、とっとと今日のインタビュー始めろよ!


 (チョそればらさなくてもいいヤン、 、、_| ̄|○

 エ?っと、わかりました、、、今日は最終回って事で、前回・前々回の説明では、グーグルをはじめとするweb2. 0と呼ばれる企業が、

  1. 労働者による「労働」が「価値」が「唯一の源泉」であること。「資本」は「利潤の増大」 を唯一の推進動機に活動を行うというマルクス経済学の解明した資本主義の仕組みは、web2. 0の世界でも貫徹している。
  2. 優れた「データベース」は「労働者」のおこなう「労働」を肩代わりできるようになる。
  3. 「データベース」という「商品」の「価値」を増大させるための競争を行っているのが、 今日のインターネットビジネスで起きている出来事のほとんどすべて
  4. グーグルなど成功している企業は、その「価値」の増大のための「労働」 をサービス利用者に肩代わりさせる技術を開発したことで成功している。

 ということが明らかになったと思います。
 今日は、このweb2.0について、梅田望夫 著  「ウェブ進化論」 本当の大変化はこれから始まるを下敷きに、マルクス経済学的なメスを入れていただきたい。

 あの本なら僕も興味深く読んだよ。 
 それなら話が早いッス。
 ではマルクスさん、ずばり
マルクスさんによるweb2.0の定義を聞かせて下さい


 わかりました。
 web2.0とは、
 「インターネット上のサービスを提供する会社がおこなう諸活動の中で、 データベースという唯一の「商品」を「生産」するための「労働」の一部を、「不特定多数無限大の利用者」 に肩代わりさせる「効率の良い仕組み」を取り入れることに成功した事例の総称」
 と定義できると思います

 なんとも、 短く言い切っちゃいましたね!
 梅田氏が新書1冊を丸々使って説明した中身がほとんど説明されて無いんですけど、、、

 そうですね、まぁ梅田氏が様々に説明した中身は、結局のところ、新しいテクノロジーが利用できるもとで、 資本主義社会で起きる、利潤増大のために「資本」が行う様々な方法について解説しているにすぎないわけです。
 しかもその方法は、「資本」がこれまでにリアルな世界で行って来た様々な利潤増大策の延長線上で説明できるし、 19世紀の資本主義を分析したマルクス経済学によって見出された様々な法則を、 真新しいカタカナ用語で説明しなおしているだけだと思って読むべきだと思いました。

 ずいぶん、自信タップリですね。
 それでは、例えば「ロング・ テール現象」についての説明はどう読みましたか?
 利潤増大のために、8割の不効率なものを切り捨てて、 2割の売れ筋商品や優秀な労働者に経営資源を集中させるというこれまでの資本主義の常識を覆すような現象だと思いますが、、、
 あのねェ、「上位2割の○○が全体の8割の△△を占める」というパレートの法則は、 僕の発見した法則じゃないからね?
 もし利潤が最大化できるなら、あまり売れない種類の「商品」でもつくって売ろうとするのが「資本の魂」なわけよ。
 極端な話、営業や販売に関わる労働者の賃金を限りなくゼロにすることが出来れば、競合他社との関係で、 あまり売れない種類の商品でも生産して貨幣と交換しようとするのは当然じゃないの。

 なるほど、、、
 それでは、情報をネットの「こちら側」から「あちら側」へ移すという変化についてはどう見たらいいのでしょう?

 そのほうがコストが最小化できる=利潤を最大化できる、 ような環境が整ったからそういった変化が起き始めているというだけです。
 19世紀の資本主義が、生産のための「生産手段」(工場など)を消費地に近い「こちら側」から、 消費地から遠いけどコストを下げられる「あちら側」に移動させたのと同じことですよ。
 当時も輸送手段の発達など、コストを下げる環境が整ったからそのような変化が起きたわけだけど、 それと同じ変化がデジタル情報を処理するためのコンピューター技術の発達によって、 デジタル化された情報についても起きている、と。

 その話は梅田氏が「チープ革命」 って言葉で説明した変化の中身とも重なってきますね。

 そういうこと。
 生産能力の増大が、 商品を生産するのに必要だった労働時間をどんどん短くしていくという資本主義社会の法則がそのまま貫徹しているだけ。
 それじゃあ、web・APIの公開についてはどうですか?
 ウェブサービスの開発者向けに、データベースのデータを利用するための環境を提供する= 「アプリケーション プログラム インターフェイス」を公開するっていう手法ですけど、、、

 商品生産の過程の一部を分業にすることで生産能力の増大を目指すというのも、利潤拡大をどこまでも追及する 「資本の魂」が行う当然の行動でしょう。
 つくっている「商品」は「データベース」なわけですから、自前のデータベースをもたない企業に、 不特定多数無限大の利用者からのデーターを集めるための「効率の良い仕組み作り」 という「労働」を肩代わりさせるわけです。
 そのための「無料で公開する」という手段もきわめて効率的と言えるでしょう。なにしろ「交換」という、最も「労働力」 を消費する過程を省略できるわけだからね。
 

 う?ん。そういうことかァ。
 それじゃあ「新しい変化」の中身も、結局は資本主義の「生産緒力の増大」 っていうこれまでの変化の延長線上の現象だということですね?
 そうなると、資本主義社会の発展そのものが「矛盾」を生み出し、その「矛盾」そのものが、 新しい社会を生み出す原動力となる、そしてその新しい社会への変化を促進させるのは「階級闘争」であるという、 マルクス主義の命題は今も生きている、と、こういう事ですね?

 そうだね。
 しばらくは、グーグルなどの新興企業による経済活動が、古い企業を淘汰したり、労賃の安い外国の労働者による「知的労働」 が容易に利用可能になることで、ますます「資本家階級」と「労働者階級」の格差が拡大する=「矛盾が拡大する」 という作用を及ぼすだろうけどね。
 なんせ、1ヵ月の所得が30ドル以下の発展途上の国民も、 米英のように1ヵ月に3000ドルぐらい稼ぐのが当たり前の国民も、グーグル・ アドセンスで一ヵ月に300ドル稼ぐためには同じ「労働」をすればいいわけだからね。
 しかも、その発展途上国で使われているのが「英語」だったりするから、その変化は急激だろうね。
 まあこれも、生産手段である工場が外国に出て行くのと同じことだよ。

 なんか、 その仕組みを独占しているグーグルみたいな技術系の会社が世界の支配者になっていくんじゃないかって、 暗くなってきちゃうんですけど・・・
 な?に、「労働者階級」 が主人公となる未来社会では、きっとそのグーグルの「所有」する「生産手段」をも「労働者階級」が豊かな生活を実現する 「生産手段」として利用できるようになるんだろうと思うよ。
 なんせ「利潤」を増大させることのみが唯一の推進動機となっている事で「過剰な生産能力」を「制御できない」 っていうバカげたシステムである「資本主義」って仕組みが、いつまでも続くわけが無いと、僕は今でも信じているからね。
 グーグルのような画期的な技術をもつ会社を生み出せたのも人類なら、「生産のための生産」「利潤増大が経済活動の唯一の目的」 という仕組みを「必要な消費のための生産」「働くものの生活を豊かにすることが経済活動の目的」 という仕組みに置き換えることだって人類には可能じゃないかね?

 なるほどネ。
 そしてその「資本主義」に変わる新しい未来社会を作る原動力は、、、、
 もちろん
 「団結ガンバロー!」ですなWWW
 やっぱりこのオチかWWW
 それじゃコバコバも
 「団結ガンバロー!」

 


 とりあえず、マルクスさんへのインタビューはこれでおしまいにしようかと思います。長らくお付き合いいただきありがとうございました。
 web進化論について、もうちょっと掘り下げた分析も考えましたが、話しが長くなるのは嫌だったので、1話に詰め込むために、 だいぶ端折りました。
 コメント欄で、不足分を補う議論を展開できたらと希望しています。議論の展開しだいで、続編を書くかも!?

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